ナノパーセント日
プロジェクトの所用期間の見積りは、ひとつひとつの作業に何日かかるかを予想して、すべての作業の予想所要日数を合計してもとめる。
ひとつひとつの作業にかかる日数は、過去のプロジェクトの経験からわりだす。
前にも書いたが、たとえば、中程度の難易度のプログラムであれば、当社の入社5年目のプログラマーなら、1日100行かける、というような経験と実績からわりだした目安があって、それで新規プロジェクトの作業日数を予想する。
多くの場合は、「1点見積り」といって、これくらいかかるだろうという日数をひとつ考える。
それに対して、「3点見積り」といって、うまくいけばこれくらい(楽観値)、ふつうこれくらい(最頻値)、へたするとこれくらい(悲観値)という、3つの日数を考えて、それを加重平均した値(期待値)を見積りに使うというやり方がある。
たとえば、あるプロジェクトを1月1日に始めたとする。
何のリスクも発生せずに順調にすすめば3ヵ月で終わるだろう(楽観値)。
ま、これまでの経験からすると、6ヵ月かかるかな(最頻値)。
へたすると、ずーっと延びて12ヵ月かかるかもしれない(悲観値)。
と考えると、下の図のようになる。
1月1日はプロジェクト開始日。3月末日以前にプロジェクトが終わる可能性はないから確率はゼロ。3月末日に終わる可能性は、ゼロではないけど、かぎりなくゼロにちかい。6月末日に終わる可能性はかなり高い。12月末日より伸びることはないだろうから、12月31日にプロジェクトが終わる可能性は、ゼロではないけど、かぎりなくゼロにちかい。
ということで、この可能性の推移を線でむすぶと以下のようになる。
ここでよくある間違いは、うまくいけば3月末日に終わるだろうという楽観的な見通しでプロジェクトを計画してしまうことだ。
驚くべきことだけど、プロジェクトにつきものの「過度な楽観主義」や、リスク・マネジメントがほとんどされない、などといった理由から、実に多くのプロジェクトが楽観値で見積もられる。
あるいは、楽観値、最頻値、悲観値といった意識のないままに、楽観値でもって1点見積りをしてしまう。
だが、この図を見れば、楽観値で見積もることがいかに馬鹿げたことか、一目瞭然だろう。3月末日に終わる可能性は、ゼロではないが、かぎりなくゼロに近いのだ。
この、ゼロではないが、かぎりなくゼロに近いプロジェクトの終了日のことを、「ナノパーセント日」と呼ぶ。
今日の話は、『熊とワルツを』トム・デマルコ/ティモシー・リスター(日経BP社)からの受け売りでした。
この本の副題は「リスクを愉しむプロジェクト管理」です。
めちゃくちゃ面白いから、この週末にでもお読みになってはいかが?
では、良い週末を。
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